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24時間対応の調剤薬局とは

24時間対応の調剤薬局とは、処方せんに基づき調剤・監査・指導を行うために、薬剤師が24時間店舗に常駐している薬局のことです。なかには連絡を受けて調剤に出向くなど、営業終了後に個別対応している薬局もあります。24時間対応のかかりつけ薬局ができれば、患者はどの医療機関に通っていても同じ薬局で薬を受け取ることが可能です。多剤服用による健康被害を減らせるとみられており、政府が門前薬局からかかりつけ薬局への転換を後押ししています。また、医療費を圧迫する事態を回避するために、残薬が生じないように継続的な管理ができる24時間対応のかかりつけ薬剤師・薬局の存在が注目を集めています。

＃24時間対応の調剤薬局は所定の条件を満たすことで売上が増加

24時間対応の調剤薬局は、所定の条件を満たすことでかかりつけ薬剤師指導料や地域支援体制加算を算定できます。病院の前に並ぶ門前薬局の数はコンビニの数よりも多いとされており、競合が多い分利益を拡大するには調剤報酬を上げる必要が出てきます。24時間対応をして所定の条件を満たせば調剤報酬が加算されるので、安定した利益を上げることも不可能ではありません。特に、コロナ禍で受診控えが起き、2021年度は調剤薬局の倒産が相次ぎました。世界情勢の煽りを受けて売上が縮小する事態が起こらないように、安定した売上を確保できる環境を整えておく必要があります。

＃給与に反映されるため、経営者側・雇用者側のどちらにとってもメリットがある

24時間対応の調剤薬局に転換を図ることは、金銭面で経営者・雇用者側のどちらにとっても大きなメリットがあります。上述したように調剤報酬が増えるため、経営者は増加した収益を雇用者の給与に反映できます。給与の引き上げができれば、薬剤師の定着に繋がるでしょう。特に、世界的なインフレの影響を受けて日本でも物価高騰が続いているため、賃上げをしている企業に注目が集まっています。年収をアップさせたいと転職に乗り出す人も増えており、マンパワーを獲得するには賃上げなどの待遇改善が必要です。調剤薬局は数が多く、地方に行くほど人手不足が嘆かれています。24時間対応による収益拡大は、経営者・雇用者にとってプラスに働く要素だといえます。

＃地域包括医療への対応として需要が高まっている

24時間対応の調剤薬局は、地域包括医療として期待されています。高齢者が住み慣れた地域で自立した生活を送りながら支援が受けられる環境を整えるために、24時間対応のかかりつけ薬局が服薬情報を把握し管理します。身近なかかりつけ薬局が服薬情報を一元的・継続的に把握できる環境を整えられれば、患者の薬物療法の安全性・有効性を向上させることが可能です。かかりつけ医と連携を図りながら、適切な薬物医療を提供できるため、地域住民が安全な生活を送れるようになります。

24時間対応の調剤薬局はマンパワー不足が大きな課題に

24時間対応の調剤薬局への転換は経営者・雇用者の双方にメリットがある一方で、マンパワー不足が大きな課題となっています。上述したように門前薬局の数は多く、地方では慢性的に薬剤師が不足している調剤薬局も珍しくありません。なぜ24時間対応の調剤薬局はマンパワー不足が懸念されるのか、調剤薬局を取り巻く背景について解説します。

＃薬剤師は女性が多く日勤を希望する人が多い

薬剤師は女性が多く、厚生労働省が公表しているデータによると割合は61.4％に上ります（令和2年度）。産前産後休業や育児休業を取得するのは女性が多いため、安定的に薬剤師を確保することは難しいのが現状です。また、育児で日勤を希望する人が多いので、24時間対応の調剤薬局は深夜帯の人材確保が課題となっています。とはいえ、夜勤は日勤よりも給与が高い傾向があるので、労働条件さえ整っていれば安定的な人材確保も夢ではありません。薬剤師が少ない夜勤はできる限り業務量を減らすなど、経営者は労働環境を整えることが急務だといえます。

出典：厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/ishi/20/dl/R02_kekka-3.pdf

＃夜間は人手不足でコア業務以外に時間が取られる

上述したように24時間対応の調剤薬局は、日勤よりも夜勤の時間帯が人手不足になる傾向があります。薬剤師の数が少ないため、コア業務以外にも雑務が発生します。常駐する薬剤師が多忙を極め、電話対応まで加わると所定の労働時間内に仕事を終わらせるのは至難の業です。場合によっては、夜勤明けに残業しなければならないケースが出てくるでしょう。慢性的な人手不足と業務量の増加により残業が発生する日が続けば、薬剤師の離職に繋がる恐れも出てきます。コア業務以外の業務負担を減らせるような仕組みづくりが重要です。

＃研修や教育制度が整っていないことも背景にある

24時間対応の調剤薬局は夜勤の時間帯に人手不足になりやすく、研修や教育制度が整えられないケースがあります。人材育成にあてる人員と時間の確保が難しく、教育まで手が回らないという現場は少なくありません。結果的に薬剤師としての成長が感じられず、早期離職を選ぶ人も出てきます。忙しくて人材育成にあてる時間が捻出できない現場では、業務量を少なくして時間を確保する必要があります。

＃負担が増大し 人材が定着しない

24時間対応の調剤薬局と一口にいっても様々なスタイルがあり、営業時間後に個別対応をしている薬局もあれば、24時間営業している薬局もあります。前者の個別対応をしている薬局の場合は、営業終了時に事務仕事など他の業務を終わらせられるでしょう。ただ、患者といつでも連絡が取れる状態にしておかなければならず、呼び出しに応じて調剤に出向く必要があるなど負担が増大します。

後者の24時間営業している薬局の場合は、コア業務を行いながら問い合わせ対応や品出しといった雑務もこなさなければなりません。また、人手が不足する夜勤の時間帯に、捌かなければならない業務が集中すると手が回らなくなるリスクがあります。個別対応の薬局も24時間営業している薬局も、薬剤師の負担が大きくなると人が定着せず、休暇が取りにくくて離職が加速するといった悪循環に陥りかねません。